燕市でオンライン診療実証|自宅とグループホームで見えた可能性と課題

2026.10.04
自宅で高齢者のそばにいる訪問看護師が、画面に医師が映るタブレットを持ってオンライン診療を支える実写風のイメージ

新潟県燕市が新潟大学などと進めめるオンライン診療の実証について、NST新潟総合テレビが10月4日、自宅とグループホームでの活用例を報じた。医師と患者を画面でつなぐ仕組みは、通院が難しい人の診察機会を増やし、家族や介護職員の負担を軽くする手段として期待されている。一方、施設では機器の操作や通信環境という課題も見えてきた。

燕市が実証計画を発表したのは6月25日。弥彦村とともに7月から取り組むとし、当初の予定では7~8月にオンライン診療を実施、9月以降に結果をまとめて今後の活用を検討することになっていた。今回の報道は、その実証が現場でどのように行われたかを伝えるものだ。

■ 月1回の訪問診療の間をつなぐ

NSTの取材では、自宅で療養する91歳の女性が、訪問看護師の持つタブレットを通じて、診療所にいるかかりつけ医の診察を受けた。医師は女性と会話し、画面越しに体調や皮膚の状態を確認した。訪問看護師がその場にいることも、この事例の特徴だ。

この女性の自宅には、医師が月に1回訪問している。報道では、その間に週1回のオンライン診療を組み合わせ、状態を確認する機会を増やす運用が紹介された。家族は、次の訪問までに体調が変わることもあるため、途中で医師に様子を伝えられる点を評価している。

ここで目指しているのは、医師の訪問をすべて画面に置き換えることではない。対面での診療を続けながら、訪問と訪問の間にも患者の様子を確認できるかが焦点となる。また、取材された自宅は医療機関から車で約10分の場所にある。医療機関までの距離だけでなく、本人の体調や移動手段、付き添う人の事情によっても、通院の負担は変わる。

■ グループホームでは付き添いの負担に着目

燕市内のグループホームでも、オンライン診療の練習と実証が行われている。NSTの取材によると、入居者が医療機関を受診する際、家族による付き添いが難しければ、施設の職員が同行する場合がある。職員が外出している間は、施設内で対応できる人手が減る。

施設にいながら医師と話せる場面が増えれば、入居者の移動や家族・職員の付き添いを減らせる可能性がある。日頃の様子を知る職員が医師に直接伝えられることも、現場が期待する点だ。ただし、今回の報道から、通院回数や職員の負担が実際にどれだけ減ったかまでは分からない。オンラインで対応できる診療と、医療機関での診察が必要な場合を見極めながら使うことになる。

■ 対象は、参加に同意した患者とかかりつけ医

市の発表資料によると、実証には新潟大学が開発した「ポータブルオンライン診療システム」を使用する。参加の意向を示した燕市医師会の医師と、定期的に受診していて事業に同意した患者をオンラインでつなぐ仕組みで、訪問看護師などが患者側に同席する場合も想定している。既存のスマートフォンやパソコンも利用できるとしている。

この仕組みには、必要に応じて医師を支える「ドクターバンク」も組み合わされている。NSTは、取材時点で約160人の医師が登録し、地域にいない専門医から助言を得ることも可能だと報じた。この人数は登録医師の数であり、個々の患者を160人が直接診察するという意味ではない。

燕市は、この実証を「転ばぬ先の医療」推進プロジェクトの一環に位置付ける。同プロジェクトでは、医療や健診、介護サービスにつながっていない高齢者への訪問、地域包括支援センターと医師による健康・医療相談、病院と診療所の連携にも取り組んでいる。オンライン診療の実証と、地域包括支援センターが医師に相談する仕組みは、それぞれ役割の異なる取り組みだ。

■ 映像が鮮明でも、音声と操作には課題

グループホームの職員は、映像は鮮明だった一方、医師の声が時折聞こえなくなる場面があったとNSTに話している。診療中に会話が途切れれば、症状や普段との違いを正確に伝えることが難しくなる。また、操作できる職員が限られている状態では、その人が不在のときに使えない。

実証を地域の日常的な診療につなげるには、通信の安定性に加え、患者の状態を知る職員が無理なく操作できるか、医師とどの情報を共有するかを確かめる必要がある。患者や家族にとっての安心感と、現場の実際の負担も併せて見ていきたい。市は9月以降に結果を評価する計画を示しており、今回見えた利点と課題をどう運用に反映するかが次の段階になる。

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