褥瘡にドーナツクッションはNG?知らないと悪化する理由と正しい対策

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もくじ

はじめに

「床ずれができてきたから、とにかく当たらないようにしたい」

そんな思いから、患部を浮かせるケアを考えたことはありませんか?

特に多いのが、円座クッション(ドーナツクッション)を使って
患部を穴の部分に入れる方法
です。

一見すると、
「当たらない=負担が減る」ように思えますし、
実際にご家族が良かれと思って選ばれることも少なくありません。

しかし、この考え方には大きな落とし穴があります。

実は、患部だけを浮かすケアは、褥瘡を悪化させる可能性があるのです。

現場でも、

「悪化を防ぐためにやっていたはずのケアが、逆に状態を悪くしてしまっていた」

というケースを見かけることがあります。

では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

この記事では、
円座クッションが褥瘡に対して逆効果になる理由と、
本当に大切な考え方について、臥位での具体例を交えながら解説していきます。

長谷川

「とりあえず浮かせる」から一歩進んで、
“悪化させないためのケア”を理解していきましょう。

褥瘡にドーナツクッションはNGなのか?

結論から言うと、褥瘡に対してドーナツクッション(円座クッション)を使うのは基本的に推奨されません。

一見すると理にかなっているように思えるこの方法ですが、実際には褥瘡の悪化につながるリスクがあります。

ではなぜ、多くの人が「良い方法」と思ってしまうのでしょうか。

一見「良さそう」に思える理由

患部が当たらない=安全と思ってしまう

ドーナツクッションは中央に穴が空いているため、
その部分に患部を入れれば「当たらない=負担が減る」と感じやすい構造になっています。

特に、床ずれができている部位に対しては、

「とにかく圧をかけないようにしたい」

そういった意識が働くため、
“直接当たらない状態を作ること”が正解だと思ってしまいがちです。

しかし実際には、当たっていない=安全とは限りません。
むしろ、その周囲にかかる負担が増えることで、別の問題を引き起こす可能性があります。

家庭介護で広まりやすい誤解

ドーナツクッションは手軽に手に入り、見た目にも分かりやすいため、
家庭での介護の場面では「とりあえず使ってみよう」と選ばれやすいアイテムです。

また、「穴がある=圧を逃がせる」という直感的なイメージもあり、
専門的な知識がない場合ほど、正しい方法だと信じてしまいやすい傾向があります。

実際に現場でも、
ご家族が良かれと思ってドーナツクッションを使用しているケースは少なくありません。

だからこそ重要なのは、
“なぜ良さそうに見えるのか”ではなく、“実際に体に何が起きているのか”を理解することです。

なぜ円座クッションは逆効果になるのか

ドーナツクッション(円座クッション)が褥瘡に対して推奨されない理由は、
単に「当たり方の問題」ではありません。

実際には、圧・ズレ・血流低下という褥瘡の3大要因を同時に引き起こしてしまう構造にあります。

ここを理解することが、褥瘡ケアの本質です。

圧が周囲に集中してしまう

円座クッションは中央が抜けているため、
体重を支えるのはその“周囲のリング部分”になります。

その結果どうなるかというと、
本来分散されるはずの圧が、一部に集中してしまう状態になります。

例えば、かかとや仙骨部を浮かせたつもりでも、
その周囲にある組織へ強い圧がかかり続けることになります。

これは「除圧」ではなく、
“圧の再分配(しかも偏った形での)”が起きている状態です。

皮膚が引っ張られる「ズレ(剪断力)」が発生する

さらに問題なのが、「ズレ(剪断力)」です。

円座クッションの構造上、
中央が沈み、周囲が支える形になるため、
皮膚や組織は外側へ引っ張られる力が働きます。

これにより、

  • 表面は動いていないように見えても
  • 内部では組織同士がずれる

という状態が起こります。

この“ズレ”は、
圧迫以上に組織へダメージを与える要因とも言われており、
褥瘡の発生・悪化に大きく関わります。

血流が低下し、組織がダメージを受ける

圧の集中とズレが重なることで、
その部位の血流はさらに悪化します。

血流が低下すると、

  • 酸素や栄養が届かない
  • 老廃物が排出されにくくなる

といった状態になり、
組織はダメージを受けやすくなります。

特に、すでに褥瘡ができている部位では、
皮膚や組織は弱っているため、
わずかな負担でも悪化につながりやすい状態です。


つまり円座クッションは、

当てないための道具ではなく、負担を集中させてしまう構造

になっているということです。

長谷川

一見やさしいケアに見えて、
実際には褥瘡を進行させるリスクを高めてしまうため、注意が必要です。

臥位でよくあるNG例(かかとのケース)

ここまでの内容を、実際の場面に当てはめて考えてみましょう。
臥位で特に多いのが、かかとの褥瘡に対する誤った対応です。

円座クッションでかかとを浮かせる危険性

かかとに褥瘡(床ずれ)ができてきたとき、

「とにかく当たらないようにしたい」

と考え、
円座クッションの穴の部分にかかとを入れるように足を置くケースがあります。

一見すると、かかとが浮いているため、
「これで圧はかかっていない」と安心してしまいがちです。

しかし実際には、足全体の重さは
円座クッションの“縁の部分”で支えられることになります。

その結果、

  • アキレス腱周囲
  • ふくらはぎの下部
  • かかとの周囲組織

といった部位に負担が集中してしまいます。

つまり、
かかとを守っているつもりが、周囲の組織に新たなリスクを作っている状態です。

見た目は浮いていても内部ではダメージが進む

さらに厄介なのは、見た目では問題が分かりにくいことです。

外から見ると、

  • かかとはしっかり浮いている
  • クッションも使っている
  • ケアをしているように見える

ため、「正しくできている」と思いやすい状態になります。

しかし内部では、

  • 圧が一点に集中している
  • 皮膚や組織が引っ張られてズレが生じている
  • 血流が低下している

といったダメージが進行しています。

長谷川

このように、“見た目の安心”と“体の中で起きていること”がズレているのが大きな問題です。

特に褥瘡は、表面に変化が出る前から内部で進行していることも多いため、
気づいたときには悪化しているケースも少なくありません。


臥位でのケアでは、
「浮いているかどうか」だけで判断するのではなく、

  • どこに圧がかかっているのか
  • ズレが生じていないか

といった視点で全体を捉えることが重要です。

なぜ褥瘡部位は特に悪化しやすいのか

「少し浮かせているのに、なぜ悪化してしまうのか?」
そう感じる方も多いかもしれません。

その理由は、褥瘡ができている時点で“すでにダメージを受けた状態”だからです。
正常な皮膚とは違い、ほんのわずかな負担でも悪化につながりやすい状態になっています。

すでに皮膚・組織が弱っている状態

褥瘡ができている部位は、

  • 血流が低下している
  • 組織にダメージが蓄積している
  • 回復力が落ちている

といった特徴があります。

つまり、健康な皮膚よりも“圧やズレに弱い状態”です。

本来であれば問題にならない程度の圧でも、
この状態では簡単に悪化の引き金になります。

そのため、「少しぐらい大丈夫だろう」という判断が、
結果的に状態を悪化させてしまうことがあります。

圧・ズレ・血流低下が重なるとどうなるか

褥瘡の悪化には、

  • 圧(長時間の圧迫)
  • ズレ(剪断力)
  • 血流低下

が大きく関係しています。

これらが単独で起こるだけでもリスクはありますが、
複数が同時に重なることで、一気にダメージが進行します。

例えば、

  • 圧がかかる → 血流が低下する
  • ズレが加わる → 組織がさらに傷つく
  • 血流が悪い → 修復が追いつかない

という悪循環に陥ります。

この状態では、
見た目の変化が少なくても内部ではダメージが進み、
気づいたときには深い褥瘡へと進行していることもあります。

だからこそ重要なのは、

「当てないこと」だけを意識するのではなく
「負担をどうコントロールするか」を考えること

です。

長谷川

褥瘡部位は“守ればいい場所”ではなく、
“より慎重に扱う必要がある場所”だと理解しておきましょう。

正しい考え方は「浮かせる」ではなく「分散する」

ここまで見てきたように、
褥瘡ケアで重要なのは「患部を浮かせること」ではありません。

長谷川

本当に大切なのは、
圧をどう分散するかという視点です。

“当てない”ことだけに意識が向くと、
結果的に別の部位へ負担を集中させてしまいます。

だからこそ、体全体で支える発想に切り替えることが重要です。

点ではなく面で支えるという発想

ドーナツクッションのようなケアは、
どうしても「点」で圧を逃がそうとする考え方になりがちです。

しかし実際には、
点で逃がすほど、他の一点に負担が集中するため、逆効果になります。

理想は、

  • 広い面で支える
  • 接触面積を増やす
  • 圧を分散させる

という状態です。

例えばクッションを使う場合でも、

  • 一部を浮かせるのではなく
  • 足全体・下肢全体を支える

といったように、広く受け止める配置が重要になります。

体圧分散の基本(臥位での考え方)

臥位での体圧分散を考えるときは、
次のようなポイントを押さえておくと分かりやすくなります。

  • 骨が突出している部位に圧が集中しやすい(かかと・仙骨・肘など)
  • 同じ部位に圧がかかり続けると血流が低下する
  • 小さなズレの積み重ねが組織ダメージにつながる

そのため、

一部を浮かせるのではなく、全体の接触と支え方を調整することが重要です。

具体的には、

  • クッションやタオルで隙間を埋める
  • 下肢全体を支えて、かかとを自然に浮かせる
  • 体の傾きや姿勢を整える

といった“ポジショニング”の工夫が必要になります。


褥瘡ケアは、特別な道具だけで解決するものではありません。

長谷川

どう支えるか、どう分散するか

この考え方を持つことで、
ケアの質は大きく変わっていきます。

褥瘡の好発部位

褥瘡を防ぐ正しい対策

褥瘡を予防・悪化させないためには、
「当てない」「浮かせる」といった単発の対処ではなく、
日々のケアの積み重ねが重要になります。

ここでは、臥位で押さえておきたい基本的な対策を解説します。

ポジショニングの工夫

長谷川

まず最も重要なのが、ポジショニング(姿勢の調整)です。

ポイントは、
体の一部ではなく“全体”をどう支えるか

例えば、

  • 下肢全体をクッションで支え、かかとが自然に浮く状態を作る
  • 膝下にクッションを入れて圧のかかり方を分散する
  • 体の隙間を埋めて、接触面積を増やす

といった工夫が有効です。

単にクッションを入れるのではなく、
どこに圧がかかっているかを意識しながら調整することが大切です。

こちらの記事でも詳しく解説しています。
👉【褥瘡・拘縮予防】ポジショニングの基本的な考え方|理学療法士が解説

体位変換の重要性

長谷川

どれだけポジショニングを工夫しても、
同じ姿勢が続けば圧は必ず蓄積します。

そのため欠かせないのが体位変換です。

  • 定期的に体の向きを変える
  • 圧のかかる部位を入れ替える
  • 長時間同じ場所に負担をかけない

これにより、血流の低下を防ぎ、
組織へのダメージを軽減することができます。

「クッションを使っているから大丈夫」ではなく、
“動かすケア”とセットで考えることが重要です。

体位交換についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
👉【危険】その体位変換、逆に褥瘡を作っています

クッション選びのポイント

クッションを使うこと自体は有効ですが、
選び方と使い方を間違えると逆効果になります。

ポイントは以下の通りです。

  • 体圧を分散できる素材(ウレタン・ゲルなど)を選ぶ
  • 一部を浮かせる形ではなく、面で支えられる形状
  • 柔らかすぎず、沈み込みすぎないもの
  • また、通気性も重要です
長谷川

特に重要なのは、
“どう使うか”まで含めて考えることです。

どんなに良いクッションでも、
使い方を誤れば円座クッションと同じように
負担を集中させてしまう可能性があります。


褥瘡対策は、特別なことをするというよりも、

「分散する」「動かす」「正しく支える」

この3つを意識することが基本です。

ここを押さえるだけで、
ケアの質は大きく変わっていきます。

まとめ|ドーナツクッションは“やさしさ”が裏目に出る

ドーナツクッション(円座クッション)は、
「患部を当てないようにしたい」というやさしさから選ばれることが多いケアです。

しかし実際には、

  • 圧が周囲に集中する
  • 皮膚や組織にズレが生じる
  • 血流が低下する

といった要因が重なり、
褥瘡を悪化させるリスクを高めてしまう可能性があります。

良かれと思ってやるほど危険

特に注意したいのは、
「しっかりケアしているつもり」になりやすい点です。

見た目には患部が浮いているため、
安心してしまいやすいですが、
内部では負担が蓄積しているケースも少なくありません。

長谷川

“やさしさ”が裏目に出てしまう典型的な例とも言えます。

大切なのは圧のコントロール

褥瘡ケアで本当に大切なのは、

どこを浮かせるかではなく、どう圧をコントロールするか

です。

  • 点で逃がすのではなく、面で分散する
  • 一部だけでなく、全体で支える
  • 同じ部位に負担をかけ続けない

こうした基本を押さえることで、
褥瘡の予防・悪化防止につながります。


「とりあえず浮かせる」から卒業して、
“負担を分散するケア”へ切り替えること

これが、褥瘡を守るための第一歩です。

合わせて読みたい記事

【褥瘡・拘縮予防】ポジショニングの基本的な考え方|理学療法士が解説
【危険】その体位変換、逆に褥瘡を作っています

YouTubeでも褥瘡について解説しています。
合わせてご視聴ください。

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この記事を書いた人

介護に関わる全ての人へ。
心あるケアは、技術にできる。
理学療法士が現場で培った“考え方と介護技術”を伝える実践ブログです。

合同会社やしのき 代表
理学療法士/訪問看護ステーション・福祉用具貸与事業所を運営。
現場での経験をもとに、
・介護技術を YouTube(登録者15万人) で発信。
・介護分野の書籍出版にも携わる。
・CayluBase(ケイルベース) を運営。
(居宅介護サービス事業所向けに事務・帳票・運営を支える)

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