はじめに
介護の現場において、「腰痛」は避けて通れないテーマのひとつです。
実際に腰痛を抱えながら働いている介護職員は少なくありませんし、たとえ今痛みがなくても、日々の負担が蓄積し、ある日突然腰痛を発症する可能性は十分にあります。
とくに移乗介助・体位変換・排泄介助といった介助動作では、前かがみや中腰の姿勢が多く、腰にかかる負担は日常生活の何倍にもなります。
厚生労働省の調査によると、介護職のうち実に6割以上が「腰痛を経験した」と答えており、慢性化すれば介護の業務だけでなく、日常生活にも大きな影響を及ぼします。
それでも、「忙しくて運動する時間がない」「ストレッチを続けられない」という声も多いのが現実です。
そんな方にこそ実践してほしいのが、“1日3分でできる腰痛予防トレーニング”。
ジムに通う必要もなく、自宅や職場のちょっとした空き時間で取り組める内容になっています。
今回は、初級編としておすすめの3種目をご紹介します。
日常の介助動作を少しでもラクに、そして長く現場で働き続けるために、今日から実践してみてください。
頑張る必要はない
今回ご紹介するトレーニングは、「ムキムキマッチョ」を目指すような本格的な筋トレではありません。
そもそも介護現場で必要なのは、大きな筋肉を育てることではなく、腰まわりを安定させるための“体幹の深部筋”をゆるやかに動かすことで体幹を安定させることです。
つまり、頑張る必要は全くないわけです!
むしろ、「なんだか物足りないな」「これで本当に効果があるの?」と感じるくらいでまずは十分です。
もし「今日はもっとやろう」「昨日の倍やってみよう」と無理をしてしまうと、筋肉痛や疲労で継続が難しくなってしまいます。
一度や二度の運動で腰の負担はすぐに軽くなるわけではありません。継続こそが最大の効果につながります。
最初は、「普段あまり使っていない筋肉を、ちょっとだけ動かしてあげよう」そんな軽い気持ちでOKです。
テレビを見ながらでも、出勤前や休憩中の3分間でも構いません。大事なのは、習慣として続けられるかどうかです。
もちろん、もっと動ける・やる気が出るという方は、少しずつ回数やセット数、負荷を増やしていただいても構いません。
ただし、目的は「腰を守る筋肉を育てること」「腰痛を防ぐこと」であって、頑張ること自体ではないということを忘れないようにしてください。
①腹筋運動(クランチ)|体幹の安定で腰を守る
目的:
腹直筋や腹斜筋を鍛えることで、骨盤と腰椎を安定させ、腰への負担を軽減します。
やり方:
- 仰向けに寝て、膝を立て、足は肩幅に開く
- 両手は太ももの上に置く
- 息を吐きながら、肩甲骨が浮く程度までゆっくり上体を起こす
※可能であれば両手で膝を触る。 - 息を吸いながら、元に戻る
→ 30秒間、ご自身のペースでできる回数をこなす。
ポイント:
- 首だけで起き上がらないよう、目線はおへそを見るように
- 勢いをつけず、ゆっくりとした動きを心がけましょう
- 回数にはこだわらないこと
効果:
インナーマッスルを刺激することで、日常の介助動作中に自然と腹圧がかかり、腰を痛めにくい身体になります。

②お尻あげ(ヒップアップ)|お尻の筋肉で骨盤を支える
目的:
中臀筋・大臀筋を鍛えることで、骨盤の後傾や姿勢の崩れを防止します。
やり方:
- 仰向けに寝て、膝を立て、足は肩幅に開く
- 両手は体の横に置く
- 息を吐きながら、お尻をゆっくり持ち上げる(膝・腰・肩が一直線になるまで)
- 上げたところで1秒キープしたら、息を吸いながらゆっくり戻す
→ 30秒間、ご自身のペースでできる回数をこなす。
ポイント:
- お尻の力で持ち上げる意識を持つ
- 反動を使わず、お尻を締めながらゆっくり上げ下げする
- 腰を反らないように注意する
- 回数にはこだわらないこと
効果:
お尻・背中・太ももなど、多くの骨盤周囲の筋肉を鍛えることができます。そのため、骨盤と腰椎をしっかり支える筋肉が働くようになり、腰への負担が減ります。

③膝立ちプランク|短時間で体幹を鍛えるメニュー
目的:
体幹全体(腹筋、背筋、臀筋)をバランスよく刺激し、介助動作で必要な安定感を養います。
やり方:
- 床にうつ伏せになり、両肘を肩の真下につく
- 膝をついたまま、腰を浮かせて体を一直線に保つ
- 頭〜お尻が一直線になる姿勢でキープ
→ 30秒キープ
ポイント:
- 腰が反ったり、お尻が浮きすぎたりしないように注意
- 腹筋を軽く締めた状態でキープするとより効果的
- 楽に感じる場合は、手のつく位置を少し前についてみてください。
効果:
姿勢保持筋を一度に鍛えられ、移乗や体位変換時の「踏ん張る力」がアップします。膝立ちバージョンなら負荷も軽く、初心者でも無理なく続けられます。

トレーニングするタイミングとセット数
「どのタイミングでやればいいの?」「1回にどれくらいすればいいの?」
そんな疑問を持つ方のために、介護現場で働く人でも無理なく続けられる、おすすめの実施タイミングとセット数をご紹介します。
おすすめのタイミング
以下のようなスキマ時間だと取り入れやすいかなと思います:
- 出勤前の朝の準備中
- お昼休憩中(ちょっとした空き時間)
- 帰宅後にテレビを見ながら
- お風呂に入る前にささっと
ポイントは、“ついで”にできるタイミングに組み込むことです。
毎日のルーティンにすっと入り込めば、無理なく習慣化できかと思います。
ちなみに私は、お風呂に入るまににささっと簡単なトレーニングをしています。
ルーティン化されると、トレーニングをしないとお風呂に入れないので、習慣化されました。
意外とおすすめです。
目安のセット数
それぞれの種目について、以下を目安にしてください:
- 1日1セット(各種目30秒)
- 慣れてきたら1日2セットまで増やしてOK(3種目×30秒×2セットで3分間です)
- 疲れや体調に合わせて回数を減らすのもOK
このくらいの軽い負荷でも、継続すれば体幹の安定や腰の負担軽減につながります。
「毎日やらなきゃ」と気負わず、「できる日だけ」「週3日でもOK」という気持ちでスタートすることが大切です。
継続が何よりの効果を生むので、まずは“続けられる形”を自分なりに見つけることを意識してみてください。
まとめ
「たった3分」が、未来の自分を守ります。
腰痛は、放っておくと慢性化し、将来の働き方や日常生活にも大きく影響します。
でも、毎日3分のトレーニングを習慣化すれば、腰に強い身体を作ることは十分可能です。
今回ご紹介したのは、
- 腹筋運動(クランチ)
- ヒップアップ(ヒップリフト)
- 膝立ちプランク
という道具不要・省スペースでできる3種目。どれも介護現場で必要な「体幹」「お尻」「姿勢保持筋」をしっかり鍛えることができます。
腰痛に悩まされない、元気な毎日を送るために、ぜひ今日から取り入れてみてください。
YouTubeでも公開していますので、動画を見ながら一緒にトレーニングしてみてください。

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