はじめに

「さっきも聞かれたのに、また同じことを聞かれる」
「急に怒り出して、どう接していいかわからない」
「声をかけても拒否されてしまう」
そんな場面が続くと、
どう対応すればいいのか分からなくなり、気持ちもすり減っていきます。



「もう限界かもしれない…」
そう感じている方も少なくありません。
ですが、ここで知っておいてほしいことがあります。
認知症のご利用者様は、
自分でも状況がうまく理解できない中で、
不安や混乱を抱えながら行動しています。
つまり、
行動だけを見て対応するとズレてしまい、
“理由”に目を向けることで、関わり方が大きく変わるのです。
この記事では、
- 困った行動が起きる理由
- 症状別の正しい対応
- 介護が楽になる考え方
を、現場視点でわかりやすく解説していきます。
少しでも負担を減らし、
ご利用者様にとっても、介助者にとっても安心できる関わり方を一緒に考えていきましょう。
なぜ認知症の行動は起きるのか
認知症のご利用者様に見られる行動は、
決して「わがまま」や「性格の問題」ではありません。
“問題行動”ではなく、“理由のある行動”です。
この前提を理解するだけで、
関わり方は大きく変わります。
記憶障害
今を保持できない
認知症では、直前の出来事を覚えておくことが難しくなります。
- さっき聞いたことを忘れる
- 説明を受けても記憶に残らない
そのため、
ご利用者様にとっては「毎回が初めての出来事」になります。
同じことを何度も聞くのは、
覚えていないから当然の行動なのです。
見当識障害
時間・場所・人がわからない
認知症が進むと、
自分が置かれている状況を正しく認識できなくなります。
- ここがどこかわからない
- 今が何時なのかわからない
- 目の前の人が誰かわからない
こうした状態は、
私たちが想像する以上に大きな不安を生みます。
不安・恐怖
行動の根本原因
記憶が曖昧で、状況も理解できない。
その中で生活することは、常に不安と隣り合わせです。
- なぜここにいるのかわからない
- この人は誰なのか不安
- これから何をされるのかわからない
その結果として
怒る・拒否する・落ち着かないといった行動につながります。
ここが重要
「理解できない世界にいる=不安で行動が乱れる」



認知症のご利用者様は、
“安心できない状態”の中で行動しています。
だからこそ大切なのは、
行動を止めることではなく、
「不安を減らす関わり方」
この視点を持つことで、
介護は大きく変わっていきます。
よくある困った行動と正しい対応
認知症のご利用者様の行動には、必ず理由があります。
ここでは、現場や在宅でよく見られる「困った行動」と、その正しい対応を具体的に解説します。
何度も同じことを聞く
理由
→ 記憶が残らない
ご利用者様にとっては、毎回が初めての出来事です。
そのため、同じ質問を繰り返すのは自然なことです。
NG対応



「さっき言ったでしょ!」
- 否定されることで、不安や混乱が強くなります。
正しい対応
- 初めて聞かれたつもりで答える
- 安心できる声かけをする



「大丈夫ですよ」
「今〇〇ですよ」
と、安心を伝えることが最優先です。
怒りっぽくなる・暴言
理由
→ 不安・混乱
状況が理解できない中で、恐怖やストレスが強くなると、
怒りという形で表現されることがあります。
NG対応
- 否定する
- 言い返す
対立が生まれ、さらに興奮しやすくなります。
正しい対応
- 感情を受け止める
- 落ち着ける環境を整える



「嫌でしたよね」
「びっくりしましたよね」
と、感情に寄り添うことが重要です。
帰りたいと言う(帰宅願望)
理由
→ 安心できる場所を求めている
「家に帰りたい」という言葉の裏には、
不安や孤独感が隠れていることが多いです。
NG対応



「ここが家でしょ!」
- 現実を押し付けることで、不安が強くなります。
正しい対応
- まず共感する
- 気持ちを受け止める
- 話題を自然に切り替える



「帰りたいですよね」
「少し休んでからにしましょうか」
など、安心を優先した関わりが大切です。
夜に落ち着かない(夜間不穏)
理由
→ 昼夜逆転・不安
夜になると、周囲が暗くなり情報が減ることで、
不安が強まりやすくなります。
正しい対応
- 生活リズムを整える(昼間に活動する)
- 照明や環境を工夫する
- 安心できる声かけを行う
夜間の対応は、
日中の過ごし方や環境づくりが大きく影響します。
ポイントまとめ
- 行動には必ず理由がある
- 否定ではなく共感
- 安心を優先する
この3つを意識するだけで、
ご利用者様の反応は大きく変わっていきます。


間違った対応が悪化させる理由
認知症のご利用者様への対応で、
「ついやってしまいがち」な関わりがあります。
それが…
- 否定する
- 叱る
- 無理に止める
一見すると、
「正しいことを伝えているだけ」に思えるかもしれません。
しかし実際には、これらの対応はすべて
“不安を強める関わり”になってしまいます。
認知症のご利用者様は、
すでに「理解できない状態」の中にいます。
その中で否定されたり、強く言われたりすると
- 混乱が強くなる
- 恐怖心が増す
- 自分を守るために拒否や興奮が出る
といった悪循環に入ってしまいます。
例えば、
こうした関わりはすべて、
ご利用者様にとって“怖い体験”として残ります。
その結果…
- さらに怒りやすくなる
- 拒否が強くなる
- 関係性が悪化する
といった形で、
介護がどんどん難しくなっていきます。
ここが重要



行動を止めることよりも、
不安を減らすことが優先
対応の軸を
「正しいかどうか」ではなく
「安心できるかどうか」です。
そのように変えるだけで、関係性は大きく変わります。
このあと解説する「考え方」を押さえることで、
さらに介護の負担を減らすことができます。
介護が楽になる“考え方”



ここからは、対応のテクニックではなく
介護そのものを楽にするための“考え方”をお伝えします。
この視点を持つだけで、
日々の関わりが大きく変わります。
正そうとしない
現実より安心
認知症のご利用者様に対して、
「正しい情報を伝えること」が必ずしも良いとは限りません。



「ここが家ですよ」
「もうさっき説明しましたよ」
こうした“正しさ”は、
かえって混乱や不安を強めてしまうことがあります。
大切なのは
現実を正すことではなく、安心してもらうこと
例えば、
- 「帰りたい」→「そうですよね、帰りたいですよね」
- 「不安」→「大丈夫ですよ、一緒にいますよ」
正しさよりも、
安心を優先する関わりが重要です。
行動ではなく“感情”を見る
表面じゃなく本質
怒る・拒否する・落ち着かない
これらの行動だけを見ると、
「困った行動」と感じてしまいます。
しかしその裏には必ず、
- 不安
- 恐怖
- 混乱
といった“感情”があります。
つまり、
行動は“結果”、感情が“原因”
例えば、
- 怒る → 不安が強い
- 拒否する → 怖い・理解できない
行動を止めるのではなく、
感情に寄り添うことが本質的な対応です。
完璧を目指さない
介護は長期戦
毎日続く介護の中で、
常に完璧な対応をすることは現実的ではありません。
- うまくいかない日もある
- 感情的になってしまうこともある
それは決して特別なことではなく、
誰にでも起こり得ることです。
大切なのは
「完璧にやること」ではなく「続けられること」
少しずつでも、
関わり方を調整していくことが、結果的に負担を減らします。
この3つで一気に楽になる
- 正そうとしない
- 感情を見る
- 完璧を目指さない
この考え方を持つだけで
- 無理にコントロールしようとしなくなる
- 気持ちの余裕が生まれる
- 関係性が安定する
といった変化が起こります。
介護は「技術」だけでなく、
“捉え方”で大きく変わるものです。
この視点を、ぜひ明日からの関わりに活かしてみてください。


介護を楽にする環境調整
ここまで関わり方についてお伝えしてきましたが、



もう一つ重要なのが「環境」です。
認知症のご利用者様は、
環境から受ける影響が非常に大きいという特徴があります。
同じ人でも、環境が変わるだけで行動が大きく変わることがあります。
結論、
不安を減らす環境づくりが、行動を安定させる
視覚的な不安を減らす
明るさ・見えやすさ
- 部屋が暗い
- 影が多い
- 見えにくい環境
こうした状況は、不安や混乱を強めます。
対策
- 部屋を明るくする
- 夜間は足元灯を使う
- 見やすい配置にする
聴覚的な刺激を調整する
音・騒音
- テレビの音が大きい
- 外の騒音が強い
- 複数の音が混在している
情報処理が難しくなり、混乱の原因になります。
対策
- 不要な音を減らす
- 静かな環境をつくる
- 安心できる音(馴染みのある音)を活用する



クラシック音楽が、
良いって文献もありますよ
環境の変化を減らす
「いつも通り」を保つ
認知症のご利用者様は、
変化にとても敏感です。
- 家具の配置が変わる
- 人が頻繁に入れ替わる
- 生活リズムがバラバラ
これだけで不安が強くなります。
対策
- できるだけ同じ環境を保つ
- 生活リズムを一定にする
- 急な変化を避ける
安心できる“手がかり”を増やす
見てわかる工夫
- トイレの場所がわからない
- 何をする場所かわからない
これも混乱の原因になります。
対策
- トイレに目印をつける
- 物の場所を固定する
- シンプルな配置にする
ここが重要



環境は“見えない介助”です
声かけや技術だけでなく、
環境を整えることで
- 不安が減る
- 行動が安定する
- 結果的に介護が楽になる
という変化が生まれます。
行動を変えようとする前に、環境を整える
この視点を持つだけで、
無理に対応しなくても、自然と落ち着く場面が増えていきます。
よくある失敗
認知症介護では、



「一生懸命やっているのに、うまくいかない」
そう感じる場面が多くあります。
その原因は、少しの“ズレ”にあることが少なくありません。
対応を変えずに続けてしまう
うまくいかない対応でも、
- いつものやり方だから
- 他に方法がわからない
といった理由で、そのまま続けてしまうことがあります。
しかし認知症のご利用者様は、
同じ対応でもその日の状態によって反応が変わるのが特徴です。
結果…
- 関係性が悪化する
- 拒否や不安が強くなる
大切なのは
「うまくいかなければ変える」という視点
環境を見直していない
行動だけに目が向くと、
- なぜその行動が起きたのか
- 環境に原因がないか
という視点が抜けがちです。
例えば…
- 部屋が暗い
- 音がうるさい
- 配置がわかりにくい
こうした要因だけで、
行動が大きく変わることもあります。
大切なのは
「人」ではなく「環境」を調整すること
1人で抱え込んでしまう



「自分がやらないといけない」
「相談するほどでもないかも」
そう思って、1人で抱え込んでしまう方は少なくありません。
しかしそれは、
- 判断に迷いが出る
- 対応の幅が狭くなる
- 精神的な負担が大きくなる
といった状態につながります。
介護は本来、
“1人で頑張るものではありません”
こんな方へ
- 対応に自信が持てない
- これで合っているのか不安
- 現場のリアルな方法を知りたい
そう感じている方は、
「やしのき介護サロン」も一つの選択肢です。
このサロンでは
- 現場で使える介護技術
- 現場のリアルを共感しあえる
- 日々の悩みの相談
など、実践ベースで学べて話せるコミュニティを用意しています。
ポイント
- 対応は固定しない
- 環境にも目を向ける
- 抱え込まず、頼る
この3つを意識するだけで、
介護は少しずつ楽になっていきます。
まとめ



認知症の方の行動には必ず理由があります
一見すると理解しにくい行動でも、
その裏には「不安」「混乱」「安心したい気持ち」があります。
大切なのは、行動を止めることではなく
“なぜその行動が起きているのか”に目を向けること
今回のポイントを振り返ると、
- 行動ではなく“理由”を見る
- 正しさより“安心”を優先する
- 環境を整えることで不安を減らす
すべてを一度に変える必要はありません。
まずは1つ、対応を変えてみることが大切です。
そしてもう一つ



完璧を目指さないこと
介護は続いていくものだからこそ、
無理なく続けられる関わり方が重要です。
今日からできることは、小さな一歩で大丈夫です。



「この対応、少し変えてみようかな」
そう思えたことを、1つだけ実践してみてください。
その積み重ねが、
ご利用者様にとっても、介助者にとっても、
安心できる時間につながっていきます。










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